北アルプスを望む天空の棚田で、自然栽培(無肥料無農薬)でお米、大豆などを栽培、販売しています。

2018年3月20日火曜日

種子法廃止とTPP、今そこにある危機

よろこぶつち農園ではお米や大豆の種は買うことはなく、元々知り合いから分けていただいた種を毎年大事に自家採種して使っています。
でも世の中は大きく変わろうとしているようです。
先日、松代で行われた種子法廃止についての講演会に参加してきました。
「種子法」とは、米・麦・大豆など主要農作物の種子を国・都道府県が責任をもって維持・供給することを定めた法律で、公的な予算の下で各都道府県で地域にあった多様な品種が開発され、農家は公共の種として安くその種を買うことが出来、またその種をもとに自家採種をすることができました。
コシヒカリや、ササニシキ、あきたこまちなど数々のお米の品種はこの制度の下で育成されてきた歴史があり、よろこぶつち農園では直接種を買っているわけではありませんが、ササニシキを栽培していますので恩恵を受けているわけです。
しかし、政府は「民間企業の参入を阻害している」として、十分な審議も説明もないままこの3月をもって種子法を廃止してしまいました。

そのことが私たちの暮らしや日本の農業にどんな影響をもたらすのか、印象に残った点を書き留めたいと思います。
まず、種子法廃止はTPP協定の発効に向けた国内法整備の一環だということです。
TPPは基本的にあらゆる分野で規制を撤廃してグローバル企業が自由に活動できるようにすることが原則となっています。
つまり、モンサントやモンサントとタイアップしている住友化学など種子の分野のグローバル企業が参入してくることは確実で、これまであった公共の種は法的・予算的根拠を失うため徐々に姿を消し、私企業による種にとってかわられていく可能性が高いということです。
事実、種子法廃止に伴う農水省の通達や、「農業競争力強化支援法」で都道府県はいずれは今まで培ってきた種子やその育成のノウハウなどを民間企業に提供することと明記されています。
これまで国民の税金で育成してきた種やそのノウハウを有償なのか無料なのかどうかわかりませんがグローバル企業に提供するってどうなの?という疑問が…。

TPP協定が発効し、公共の種が姿を消し民間企業が種を握ることによって心配されることとして、まず種の価格が大幅に上がることが予想されています。
また、これまで各地域で育成されてきた多様な品種が採算が合わないものを中心に淘汰されてしまうであろうこと。
そして、今のところ日本では遺伝子組み換えの稲や大豆は栽培されていませんが、近い将来一般的に栽培されるようになる可能性も高いです。
既にモンサントは遺伝子組み換えの稲を日本国内で試験栽培していて、承認されるのを待っている状態だそうです。
また種子が企業の所有物であり特許物ということになり、農家による自家採種という行為もできなくなる可能性もあります。
みんなの種から私企業の種へ、何とも窮屈な世界です。

それにしてもTPP協定については他にも気になることがいっぱい。
「自由貿易」を錦の御旗に農や食の安全を守るための規制やルールが撤廃されてしまうことになりそうです。
既に日本には遺伝子組み換え食品が輸入され様々な加工食品に使用されているのですが、さらに多くの遺伝子組み換え食品が大量に輸入されるようになりそうです。
そして遺伝子組み換え表示や国産表示、産地表示をすることも制限されてしまう可能性もあるとのこと。
米韓FTAで先行する韓国では地産地消の学校給食の取り組みなども出来なくなっているそうです。
また、既にTPP発効に先立って残留農薬の規制値も大幅に緩和されていて、特にグリサホート(除草剤)の残留基準値の緩和ぶりは異常です。
遺伝子組み換え技術と除草剤はセットになっているということもありますが、近年アメリカでは遺伝子組み換えでない小麦畑に収穫前に除草剤を散布して枯らして乾燥させ、コンバインで収穫するという方法が広がっていて、それに対応したものではと言われています。
その小麦がパンやめん、お菓子などの原材料として入って来るのかと思うとぞっとします。
遺伝子組み換え食品や農薬残留した食品が大量に入ってくるという時代になりそうです。

一方、アメリカやヨーロッパでは遺伝子組み換え食品や農薬が健康を害することが医学界も含めて広く知られるようになり、消費者の危機意識も高まっているそうです。
私も具体的なメカニズムは初めて知ったのですが、遺伝子組み換えコーンはそれを食べた虫の腸を破壊することで虫を殺す殺虫作用があるのですが、虫だけでなく人間を含む哺乳類の腸にも大きなダメージを与えることが分かってきたそうです。
また、グリサホート(除草剤)は植物がアミノ酸を作る経路を破壊することで草を枯らすので人間を含む哺乳類には安全であるとメーカーは主張して来ましたが、哺乳類の腸内に入ると植物と同じアミノ酸経路を持つ腸内細菌を殺してしまうことが判明。
消化吸収機能や免疫機能をつかさどる腸や腸内細菌がダメージを受けることで各種ガン、糖尿病、自閉症や自己免疫疾患に生殖障害など様々な病気を引き起こすことが分かってきたそうです。
ちなみにグリサホート(除草剤)は日本ではラウンドアップなどの商品名でホームセンターで当たり前のように売られていて、時期になるとあちこちで草が茶色く枯れています…(涙)。

ヨーロッパでは世論の強い力でグリサホートやネオニコ農薬の規制が始まっています。
アメリカでは子育て世代のお母さんたちを中心に消費者運動が盛り上がり、NonGMO(遺伝子組み換えでない)食品やオーガニック食品の需要が高まり、スーパーに行けば当たり前のように売られているとのこと。
それはとても喜ばしいことなのですが、行き場を失った遺伝子組み換え食品がTPPをてこに日本に流れ込んでくるのではと懸念されています。
それを押し返すことが出来るかどうかは私たち日本の消費者にかかっていますが、現状ではマスメディアでの報道も少なく、医学界も無関心、状況は厳しいと言わざるをえません。

希望としては種子法廃止を懸念する声が農業関係者を中心にあり、新潟県など一部の自治体でこれまでどおり公共の種子を維持していくことが条例として可決され、ほかの自治体にも広がる動きがあるということです。

様々な問題があるTPP協定、個人で防衛できることにも限界があります。
今回の講演会も大きな会場に立ち見が出るほどたくさんの人が集まっていました。
私個人でできることは自然栽培のお米や大豆をきちんと生産して少しでも多くの方に提供していくこと、縁ある人に伝えていくことしかありませんが、少しでも多くの人が事実を知ってヨーロッパやアメリカのような大きな動きにつながっていってほしいなと思います。










2018年3月18日日曜日

春の田んぼ仕事始まりました。

暖かくなったかなと思ったらまた寒くなったりと三寒四温な日々ですが、雪もすっかりとけて、福寿草が満開になり、オオイヌノフグリ、フキノトウ、などなど春を告げてくれています。
さて、今年の田んぼ仕事をいよいよ始めました。
まずは苗を育てる苗代の予定地に米ぬかを撒きました。
苗は狭いところで密集して育てるため地力が必要で、現状では補いとして自家産の米ぬかを使用しています。
現状では育苗に関しては有機肥料を使っているということになりますが、収穫したお米を精米して出たものを戻すという感覚で自然な範囲と考えています。
そして、秋の収穫後そのままになっていた藁の片付けをしています。
本当は秋のうちにやっておきたいことですが…。
収穫後の藁をどうするかというのは結構大事なポイントで、これまでいろいろと試行錯誤してきましたが、一旦田んぼの外に持ち出すということに最近は落ち着いています。
持ち出した藁は積んでおいて、1~2年後にすっかり分解したころに田んぼに戻します。
分解していない生の藁を田んぼにすき込むと、稲の生育に何かと悪い影響を与えてしまうのです。
こちらは1年積んでおいた藁です。
黒くなってボロボロになっています。
このくらいになれば田んぼに戻しても大丈夫かな?
自然栽培の農家さんでも、藁を全く戻さないという方もいれば、戻すという方もいたりといろいろです。
藁を戻す田んぼと戻さない田んぼと両方やってみて稲の生育を比較してみようかと思います。


2018年3月5日月曜日

お米の食味検査の結果出ました。

ここ信州の山里も3月に入り急に春めいてきました。
今日は雪ではなく本降りの春の雨が降っています。

先日、昨年に引き続き松本市にある自然農法国際研究センターにお米の食味検査をしていただきました。
気になる結果はいかに…?
まずは検査をして下さった三木さんの、「今まで18年間食味値を見てきたわけですが、ベスト5に入る結果だったと思います。」というコメントにびっくり!
今まで試行錯誤を繰り返しながらやってきた苦労が報われたような嬉しいお言葉をいただきました。
具体的な内容ですが、難しい数字が並んでいて分かり難いのですが、窒素(N)、カリウム(K)、マグネシウム(Mg)、アミロースの各成分の数値から食感を表す粘り値、食味を表す旨味値が算出されています。
粘り値が標準を大きく上回る1.9、旨味値がこれも標準を大きく上回る1.8でした(粘り値旨味値ともに±0を基準に1.0以上が良食味)。
前回の2016年産が粘り値が1.5、旨味値が1.4だったことに比べてもかなり良いということが出来ると思います。
特に窒素(N)の数値がとても低かったことが特徴的で、やはり肥料を施さない自然栽培を継続していることが数値に表れているのではないかと思います。
湧水から流れ込むミネラル分も良い結果に寄与しているはず。
また、天候条件と作業のタイミングも良かったのだと思います。
今回はサンプル検査なので、田んぼによって数値は変わってくる可能性はあり、一概には言えないとは思いますが、今の栽培法や管理の方法で基本的には間違っていないなということ、よろこぶつち農園のお米を自信をもってお客様にもお勧めしていけるなと思いました。
今後の課題としては、この食味を維持しつつ収量をあげていくこと、死米などくず米の比率を下げて品質を上げていくことでしょうか(2017年産は死米が多くて色彩選別機で選別しています。)。
もちろん、相変わらず草対策も課題ですが…。
まだまだ試行錯誤は続きそうです。
もうじき今年のお米作りが始まります。
今年も美味しいお米を皆様にお届けできるよう頑張りたいと改めて思いました。