北アルプスを望む天空の棚田で、自然栽培(無肥料無農薬)でお米、大豆などを栽培、販売しています。

自然栽培のお米

よろこぶつち農園の田んぼは、北アルプスを望む聖山の中腹(大岡地区根越)、標高650mから700mほどの棚田に点在しています。
面積は2019年現在約75aです。
川口由一さんの不耕起自然農の学びと実践を経て、2013年からは田んぼの面積を増やしたことを機に、機械の力を借りつつ農薬肥料を使わない自然栽培を目指し実践しています。

肥料・農薬を使わない自然栽培を追求する訳

当地は聖山中腹から豊富に湧き出る湧水に恵まれている地域で、昔からこの湧水を利用してお米作りの盛んな地域でした。
当農園も同じ地区内で湧き出る「花尾の湧水」を田んぼに引いており、その水の恵みに感謝してお米作りをしています。
田んぼに入った水はゆっくりと地下水へと浸み込んでいきます。
田畑で一般的に使用される農薬や、化学肥料・有機肥料による硝酸態窒素の地下水汚染も問題になっています。
清らかな水が清らかなままであることを願って、農薬・化学肥料は一切使わず、また、田んぼには収穫後のわらを戻すのみで、有機肥料も原則的に使いません。
過剰な肥料はお米など作物にも硝酸態窒素としてたまり、それを食べる人への有害性も指摘されています。
環境にも人にも負荷が少ない農法として無肥料無農薬の自然栽培を追及していきたいと考えています。
森の木々や野の草たちが肥料をやらなくても健康に育つように、お米も肥料を投入しなくてもお米の育ちやすい環境を整えてあげれば健康に育つ、という自然栽培の考えに基づいて様々に試行錯誤しています。

自然栽培のお米作りの一年

春の遅い信州の山里。
桜の花が満開になる4月の下旬頃にお米の種まきをします。
種籾は前年に収穫したものから自家採種し、薬剤での種子消毒ではなくお湯を使った消毒(温湯消毒)をし、浸漬して芽だししたものを蒔きます。
蒔き終わった苗箱は田んぼの一角に作った苗代に並べ保温資材で保温します。
この際、苗代にあらかじめ主に米ぬかを振ってすき込んでいます。
現状では苗には有機肥料を使っているということになりますが、自分の田んぼで収穫したお米を精米して出た米ぬかを戻す自然な範囲と考えています。
発芽した苗は、田植えまで約40日間、温度管理と水管理をしながらここで大事に育てます。
春先はまだ寒い日も多いので、保温資材で保温に努め、暖かくなってくると今度は暑くなりすぎないようにと温度調整が難しいです。
育苗と並行して田んぼの荒起こし、その後水を入れて代かきをして田植えの準備をします。
この荒起こし、入水、代かきのタイミングと方法でその後の稲の生育に大きな影響を与えるのですが、未だにつかめておらず様々に試行錯誤しています。

6月初旬、苗が大きくなり、気温も十分上がる頃に田植えをします。
大事に育ててきた苗をのびのび育つよう広い田んぼに放します。
田植えが終わってホッとする間もなく、すぐに草取りが始まります。
除草剤を使わない田んぼはお米が草に負けないよう草対策が要となります。
エンジン除草機をメインに、7月中旬くらいまでひたすら草を取り続けます。
この時期の草の成長はとても早く、機械では取り切れずに残ってしまう草は手で取るはめになります。
腰をかがめて一株一株草を取る作業は本当に気の遠くなる辛い作業です。
究極的には草の生えにくくなるような、また草が生えても稲が負けずに元気に育つような、そんな田んぼに環境を整えてあげるのが理想ですが、まだまだ実現できていません。
除草作業は楽ではありませんが、たくさんの生き物たちに出会うことが出来ます。
カエルにオタマジャクシ、アメンボ、コオイムシ、ゲンゴロウ、マツモムシ、ミズカマキリ、ヤゴなどなど、農薬を使わない田んぼは生き物がいっぱいです。
お日さまと土と水とそして沢山の生き物たちと共にお米は育ちます。
8月上旬、出穂・開花です。
以降は水管理をしながら生育を見守ります。
田んぼの畦や土手の草刈りも大事な仕事。
10月、赤とんぼが飛び交う中、田んぼは黄金色に色づき、待ちに待った稲刈りです。
ここまで実ってくれた自然の恵みに感謝しながら稲刈りします。
最後の大事な工程、刈った稲はハザにかけて天日干しにします。
通常のお米はコンバインで刈った後、乾燥機に入れて一日で一気に乾燥させてしまいますが、天日干しの場合は3週間ほどかけてゆっくり乾燥、熟成させます。
手間と時間はかかりますが、これでお日様のパワーがじっくり入ってぐっと美味しくなります。
棚田にハザが並ぶ風景は本当に美しく、できる限り大事にしていきたいものです。
ただ、ハザ掛け作業は人手の要る作業、ご興味のある方の援農いつでも大歓迎です。
お日さまと風の力で約3週間じっくり干した後、天気を見ながら脱穀機で脱穀します。
脱穀後のお米は籾付きのままで保管し、原則ご注文頂いた分づつ籾摺り調整する今摺り米でお届けします。
通常のお米は収穫後すぐに籾摺りをして玄米で保管されるのが一般的ですが、籾で保管することによってお米の美味しさ、品質が比較的長く保たれます。
肥料を使わないお米は食べると雑味のないスッキリとした味わいで体に浸み入るような美味しさです。
余分な窒素分が含まれていないので体にも負担がかかりません。
玄米食の方にもおすすめです。

品種について

品種はササニシキを主に作付しています。
ササニシキは一昔前までは東北地方を中心に広く栽培されていましたが、コシヒカリ系のモチモチしたお米に押されて今では幻のお米となってしまいました。
コシヒカリ系のお米と比べるとさっぱりとした食感で上品な味わいです。
昔ながらのお米の味に近い品種と言えます。

お米にはアミロースとアミロペクチンと2種類のでんぷんが含まれているのですが、アミロースの割合が高いほどさっぱり味、アミロペクチンの割合が高いほどモチモチした食感になり、もち米はアミロペクチン100%です。
アミロペクチンは常食するには胃腸に負担がかかると言われており、お米アレルギーの原因とも言われています。
お餅も美味しいからと食べ過ぎると胃もたれしますよね。
ササニシキはコシヒカリ系のお米に比べるとアミロペクチンの割合が低く、アミロースの割合が高いため、さっぱりした食感で、毎日食べても体に負担が少ないと言われています。
アレルギーのある方にも召し上がって頂ける可能性のあるお米です。

種は自家採種を繰り返すことで、この土地や自然栽培に適応した性質に変化していくとも言われています。
本来のササニシキの性質からは少しづつ変化してきているかもしれません。
その変化や違いも楽しんできただければ幸いです。
また、そのこともあり法律に基づくお米の品質検査を受けておりません。
そのため、品種、産地、産年などを袋に記載することが出来ない「未検査米」扱いとなります。
あらかじめご了承ください。